投資で重要な1つのこと

「卵を一つのカゴに盛るな」という投資の格言にあるように、投資で重要なことを1つだけあげるとするなら、「分散」になる気がします。例えば、資産の種類を分散したり、銘柄を分散したり、国を分散したり、時間を分散したりすることにより、予測不可能な相場の動きによる資産価格の上昇と下落を相殺しながら、トータルで右肩上がりになればよしとすることができる可能性が高まるからです。何より、逆相関関係に動く傾向があるものに分散しておくことにより、何か一つの資産種類が暴落した場合でも、逆の動きをする資産種類がクッションとして下落分をある程度吸収してくれると思えるだけでも、心理的な負荷が少なくて済み、リスクに怯えながら夜も眠れないという状況は回避できるはずです。

分散投資は常識化し利用するに越したことはない

投資における分散の考え方は、ほぼ常識化してきており、投資商品においてはインデックスファンドのように特定の市場に連動するような商品や、全世界株式ファンドのような商品、上場投資信託、不動産投資信託、債券ファンド、コモディティ連動商品など、投資初心者でもプロ並みの運用益を得られるようなものが、いつでもどこでも、パソコンやスマホで気軽に手軽に買える時代になりつつあるのです。但し、分散投資の場合は、長期的に見て全体の資産が右肩上がりになる可能性があるものの、上昇の元となる利回りはそれほど大きくならない傾向があるため、同じリスクをとったとしても、投資元本が少ないうちはメリットが小さく、投資元本の多寡で得られる結果に大きな格差が生じてしまいます。そういう意味では、分散とは正反対の一攫千金を狙う一銘柄への集中投資という選択肢は、リスクが高いものの、リスクとリターンは表裏一体のため、爆益をもたらす可能性は否定できないのです。とはいえ、お金がお金を生むという福利の力を味方につけて、大きなリスクをとらなくても資産をほったらかしにしたままで右肩上がりに増やしていける力を利用しないよりは、利用するに越したことはないのです。

投資元本となるタネ銭の確保

では、投資元本の多寡が結果に格差を生むのであれば、投資元本となるタネ銭をできるだけ増やしていけばいいということになりますが、タネ銭を確保するには、収入と支出の両方をコントロールしていくことが重要となります。いくら収入が多くても、同額を支出していると、永遠にタネ銭の確保はできません。逆に収入が少なくても、きちっと自分で決めた割合を貯蓄に回して、残りで家計支出をしているのなら、確実にタネ銭は確保できることとなります。つまり、当たり前ではありますが、収入の範囲内で支出を心掛けるのみならず、実際に貯蓄を実行している人だけが、着実にタネ銭の確保ができるのです。ですから、特に固定的な家計支出をできるだけ抑えながら、貯蓄率を高めていく習慣をつけることが基本となり、誰もが実行さえすればすぐにでも結果につながるのです。

収入の柱も分散がスタンダードに

「収入-支出=貯蓄」の習慣ができたとして、支出を抑えるにも限度というものがあり、あまり細かい節約をしていると心が寂しくなりかねず、生活レベルを落としてまで支出を抑えることになると豊かな暮らしからは遠ざかり兼ねません。ですから、支出の見直しについては、ある程度の限界があるということを踏まえたうえで、次に考えるべきなのが、収入の柱を増やしていくこととなります。ひと昔前までのような終身雇用、年功序列が成立していた時代は終焉を迎えつつあり、右肩上がりに給与が上がることが期待できないなかでは、収入を一社だけに頼ることは、投資における一銘柄に全額投資するほどのリスクをとるようなものです。もちろん、知識や技術、能力やスキルを高く評価されていて、好待遇が今後も約束されているのなら、それを手放す必要はないのは言うまでもありませんが、もしそのような環境ではなく、将来の見通しに少しでも曇りがあるようでしたら、これからの時代においては、兼業や副業、ギグワーク、フリーランス、資産からの収入など、収入も分散していくことがスタンダードになっていくはずです。

好きや得意を活かす

人生100年時代とも言われるなか、好きでも得意でもない仕事を長年続けていくのは至難の業で、我慢や難行苦行を収入の柱にする必要はなく、テクノロジーの進化により誰にでも無数の選択肢があり、そのなかから、好きや得意を活かせるミチを模索していくことができるはずです。とはいえ、若いうちは何が好きか得意かもわからない場合もあり、様々な経験を通してキャリアを磨き、自己投資により知識やスキルを身につける努力も必要ですが、まずは出会いがあった仕事に全力を傾けてみて、できないことができるようになったり、知らなかったことを学んでみたり、自分の直感を信じて即行動してみることが、新たな自分を発見したり、人生に変化をもたらしたりすることに繋がるのかも知れません。

分散と集中の自由選択

場合によっては、分散のつもりで収入の柱を増やす努力をしているうちに、好きや得意に出会い、それがライフワークとなるならば、そこに全集中するのも選択肢の一つになります。そこから得られるものは、収入のみならず、自らの人生を自らの自由で選択してコントロールできる自動販売機を手に入れるようなものとなる可能性もあるのです。ですから、あらゆる可能性を閉ざすことなく、目の前に訪れる出会いやチャンスを見逃さず、時に分散し、時に集中し、あるものは分散し、あるものは集中し、失敗を恐れず失敗から学び、一度きりの人生を悔いのないものにしていこうと、理想を思い描き、現実と向き合い、他人を羨んだり、他人のせいにすることなく、自分自身が今何を為すべきか、どうあるべきかを考えていきたいものです。

By hb