社会全体でリスクに備える公的保障

人が生きるうえにおいては、病気やケガ、失業、死亡など、遭遇してしまうと自分や家族に大きな影響を及ぼす出来事(リスク)があります。そのようなリスクを負った人が、必要最低限の生活を維持できるようにするためのセーフティネットとして、社会全体でリスクに備えるものが公的保障(社会保障)です。国などが、あらかじめ広く浅く保険料や税金としてお金を集めておいたなかから、リスクを負った方々に現金給付や現物給付を行う支え合いの仕組みで、負担と給付のバランスを調整しながら運営を行っており、一人ひとりがリスクに備えるべき負担と手間を軽減してくれているのです。

個人的事情を考慮したリスクに備える私的保障

公的保障で必要最低限の生活はある程度維持できるとしても、個々の生活は千差万別ですから、それぞれの個人的事情を考慮した備えをするには、足りない分だけ私的保障をトッピングすることで、公的保障の不足分を私的保障で補う、無駄のない保障のポートフォリオをつくることが理想です。ただ、その際に気をつけたいことは、リスクを過大に見積もり過ぎないことや、業者など他者からの不安を煽るような意見やセールストークに惑わされないこと、保障に頼りすぎずに生きる力にも目を向けることなど、私的保障もできるだけ最低限で備えることを意識することです。

シンプルイズベスト

そもそも、私的保障としての備えが必要な場合というのは、自分や家族にふりかかる確率は極めて低いものの、ふりかかってしまうと多額の金銭が必要になる状況、つまり、リスクは低いけれど、リスクを負うと損失が過大になる場合なのです。確率が低い分使う可能性も少ないため、一般的には保障料も抑えられ、保障はシンプルでコスパがいいものになるはずで、本来の保障目的を見失うことなく、シンプルイズベストを心掛けておくことが大切です。

目的を見失わず知識と情報を精査

人は得する喜びよりも、損する痛みを過大に感じる生き物とも言われていますので、シンプルで掛け捨てになるような保障には抵抗を感じがちになりますが、保障は保障、貯蓄は貯蓄、それぞれの目的に合わせて最適な選択ができるようにする必要があります。そのためには、必要な知識や正しい情報をもとに精査できるよう、自分で学ぶか、信頼できる人の意見を参考にするという姿勢も大切です。ですから、分からないことには即断即決せず、まずは自分でよく考えてみて、自分では判断しかねる場合には、利益関係がなく知識をもった信頼できる人の意見に耳を傾けたうえで、判断した方が無難です。

公的保障にも私的保障にも頼らない私的資本

いずれにしても、人は保障のために生きている訳でも、保障がなければ安心できない訳でもなく、何も持たずに生まれ、何も持たずに死んでいくのですから、もっと自由に好きなように生きるという選択肢があってもいいのかも知れません。まずこの国に生まれただけでも、かなり恵まれた環境にあるはずですし、今のような情報化社会の利便性を享受し、これからはAIやロボットが様々な問題を解決しながら活躍していく時代に生きていくこと自体、無限の可能性を秘めている気がします。そのようななかで、自らの知識や能力、経験をフルに活かし、人的資本を高めながら生きていくことができるようにしつつ、人的資本の稼ぎから複利の力を活かした金融資本への投資により、そこから得られる金融資産も含めた私的資本を築いていくことができるようになれば、公的保障にも私的保障にも頼る必要はなくなるのです。自分こそが最大の資本であると言われる所以を体現していきたいものです。

By hb