大きな会社ではないので、社長が身近で人と金のご苦労をされているのを見ていると、ただ自分が与えられた仕事だけをしている場合ではない気がしてくるものだ。常に人が足りない中では、資格者でなければ出来ない業務を除けば、何でも出来るようにしておくに越したことはないのだ。突然人が辞める事も日常茶飯事なので、家事や買い物、通院などのサービス提供のみならず、請求事務や書類整理などの事務的な仕事などでも、とにかく何でも出来るように心掛けた。

と言うよりも、人と接するのが苦手な方であるからこそ、人と関わるサービス提供よりは、事務処理的な仕事の方が自分には向いていると感じていたのかも知れない。ですから、現場に出ざるを得ない場合を除いては、バックオフィスが上手く回るように、先手先手で仕事をこなす事に喜びを感じていたような気がする。そうすると、仕事がどんどんコチラに回ってくるようになるので、更に効率よくするには如何にすべきか、準備、実行、後始末に至るまで、好き勝手にさせてもらえるようになっていた。

また、会社の車も使わせてもらえるようになり、往復時の通勤のみならず、その前後で私用があっても、休日に至っても自由に使っていいと言っていただいて、特に深く考える事もなく、さすがに遠出をする事はなかったもののお言葉に甘えて結構乗り回していた。ふと気づくと、独立したつもりがいつの間にやら、自分の事業や将来の事に蓋をして、まんまと社長のワナにはまりかけて、結局のところサラリーマン生活にどっぷりとつかりかかっていたのだ。

そんな時、一緒に働いていた例の占い師さんと、お昼の休憩を一緒に過ごすタイミングがあり、近くの雰囲気と居心地の良い喫茶店に行く機会が何度かあった。そして、マスターと彼とで会話が弾む様子を聞いていると、お店を任せられるような人を探しているが誰か知らないかという感じの話だったのだ。元々私は、喫茶店にも興味があって、学生時代は本格的なドリップ仕立ての喫茶店でバイトをしていた事もあった。これはチャンスとばかりに、それから何度か通って顔を覚えてもらったぐらいの時のある日、思い切ってマスターに切り出してみたのだ。

By hb

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